はじめに
当事務所では、子どもの親権者の変更に関するご相談・ご依頼について、対応実績がございます。
親権者変更については、そうそう簡単に認容されるものではありませんが、認められ得る類型がいくつか存在します。
また、子どもの親権者を変更するためには、家庭裁判所での調停・審判の手続を行わなければならず、ケースに応じて附随する審判等の申立てを家庭裁判所に申し立てる必要があります。
今回のコラムでは、親権者変更が認められる類型と手続について、ご説明させていただきます。
親権者変更が認められる類型
親同士で親権者変更について合意ができている
親同士で親権者変更について合意ができており、親権者変更後の養育環境に大きな問題がなく、子どもが強く拒絶しているなどの事情がなければ、親権者変更は比較的スムーズに認められるものと考えられます。
養育環境に重大な問題が発生している
子どもが親権者からの虐待やネグレクトで児童福祉施設に入れられたとか、親権者が死亡したなど、養育環境に重大な問題が発生している場合には、親権者変更が認められ得るでしょう。
ただし、親権者が死亡した場合であっても、養育環境に問題がなければ、同居している祖父母などが親権者として指定され、実親が親権者として指定されないこともあります。
一定年齢以上の子どもが親権者変更を希望している
子どもが親権者との生活に不満を持ち、親権者変更を希望することがあります。
子どもが小学校高学年以上など、自分の意思を持つ年齢であれば、子どもの意思が重視されます。
また、法律上、親権者変更の審判において、子どもが15歳以上の場合には、子どもの意思を聴かなければならないものとされます。
このように、一定年齢以上の子どもが親権者変更を希望している場合には、親権者変更が認められる可能性が高いと言えるでしょう。
親権者変更のための手続
親権者変更の調停・審判
子どもの親権者の変更は、親同士が合意しているというだけでは、変更を成立させることはできません。
家庭裁判所で親権者変更の調停または審判の手続を経る必要があります。
親同士が親権者変更に合意している場合には、親権者変更の調停を申し立てれば、調停の席での話し合いで、変更を成立させられることが多いでしょう。
しかし、親同士で親権者変更について対立している場合には、調停の席での話し合いで合意することが困難と見込まれるのが通常ですので、親権者変更の審判の手続を利用するのが基本です。
親権者変更の審判では、子どもの生活状況(子どもが現在、問題なく生活できているかどうか)、子どもの年齢(子どもが乳幼児の場合には、母親が優先される)、子どもの意思(子どもが一定年齢以上の場合には、親権者変更に関する子どもの意向が尊重される)などの事情を踏まえて、親権者を変更するべきかどうかが判断されます。
子の引渡しの審判
子どもが相手方(親権者)のもとにいる状況で、親権者変更の審判を申し立てる場合には、同時に、子の引渡しの審判を家庭裁判所に申し立てることとなります。
子の引渡しの審判とは、相手方のもとにいる子どもを、ご自身のもとに引き渡すべきかどうかについて、家庭裁判所に決定してもらう手続のことを言います。
子の引渡しが認められるかどうかは、親権者変更が認められるかどうかと連動しており、親権者変更が認められる場合には、ご自身(変更後の親権者)のもとに子どもを引き渡すように命じられるのが原則です。
一方で、親権者変更が却下される場合には、子の引渡しもまた、却下されることとなるでしょう。
親権者の職務執行停止・職務代行者選任の保全処分
例えば、子どもが相手方(親権者)からの虐待やネグレクトに耐えかねて、ご自身のもとに身を寄せて親権者変更を希望しているようなケースでは、親権者の職務執行停止・職務代行者選任の保全処分を家庭裁判所に申し立てる必要があるでしょう。
親権者変更の審判は、相手方が変更について争ってくるかどうかにもよりますが、決着までには少なくとも数か月以上を要します。
その間、子どもがご自身のもとで生活しているにもかかわらず、いまだ親権者変更が認められていないために、子どもに関する諸々の決定・手続を代行できないとなると、子どもの生活などに重大な支障が生じるおそれがあります。
そこで、相手方の親権者としての権限を停止し、ご自身を親権の臨時代行者として選任してもらうための保全処分を、親権者変更の審判と同時に家庭裁判所に申し立てる必要があります。
面会交流の調停・審判
子どもの親権者変更のトラブルが発生している事案では、子どもとの面会交流がスムーズに実施できなくなっていることが少なくありません。
このようなケースにおいて、子どもとの円滑な面会交流の実施を希望するのであれば、面会交流の調停または審判を家庭裁判所に申し立てるのがよいでしょう。
弁護士にご相談ください
以上のように、親権者変更を検討するに当たっては、変更が認められ得るかどうかを慎重に検討するとともに、家庭裁判所での調停・審判などの手続を適切に選択し、対応していくことが必要となります。
専門家でない方がご自身のご判断だけで対応することにはリスクがありますので、親権の問題に詳しい弁護士にまずはご相談いただくのがよいでしょう。
当事務所では、親権者変更の問題に関する対応実績がございますので、お気軽にご相談いただければと存じます。
(弁護士・木村哲也)