離婚に関する問題は、離婚の成立によって全てが終結となるわけではありません。
離婚の成立によって、それまでに続いてきた身分や資格などに変更が生じることになり、それに伴って様々な手続が必要となります。
やっとの思いで離婚した後に待っている諸手続は、非常に面倒に思うかもしれません。
しかし、離婚後の諸手続を放置してしまうと、思わぬ不利益を被ってしまうこともあります。

ここでは、離婚後に必要となる諸手続について、ご説明いたします。

1 離婚の届出、離婚後の戸籍と姓の手続

(1)離婚の届出

協議離婚の場合には、夫と妻のそれぞれが記入・捺印した離婚届を役場へ提出すれば、離婚が成立します。
離婚届の提出先は、どこの市町村役場でも受け付けられますが、本籍地以外の役場に提出する場合には、戸籍謄本が必要になります。

調停離婚や裁判離婚(和解または判決)の場合には、調停調書謄本、和解調書謄本、判決書謄本を役場に提出する必要があります。
これにより、それぞれ、調停成立の日、和解成立の日、判決言渡しの日に離婚が成立したことになります。

(2)離婚後の戸籍と姓

離婚の届出に際して、離婚後の戸籍と姓(氏)を決める必要があります。その決め方は、次の3通りがあります。

①結婚前の戸籍と姓に戻る
②離婚後も結婚中の姓とし、自分を戸籍筆頭者とした戸籍を新しく作る
③結婚前の姓に戻り、自分を戸籍筆頭者とした戸籍を新しく作る

ほとんどの場合で、②か③が選択されています。
②の場合には、離婚日から3か月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を役場に提出しなければなりません。
期限を過ぎてしまうと、結婚前の姓に一旦戻ってしまい、再度変更する際には家庭裁判所から氏の変更の許可を得る必要があります。
許可が認められない可能性もあるので、結婚中の姓とする場合には、3か月以内の届出は忘れないよう注意しなければなりません。

自分が子どもの親権者となり、さらに自分の戸籍に入れるためには、②と③のいずれの場合でも、家庭裁判所へ「子の氏の変更許可の申立て」の手続を取った上で、役場への「入籍届」の提出が必要となります。
なお、②の場合でも、結婚中に使用していた姓と、離婚後に使用する結婚中の姓は、戸籍上は別の姓と扱われるため、自分の戸籍に入れる場合には、「子の氏の変更許可の申立て」の手続が必要となります。

2 離婚後の年金の手続

(1)年金分割

年金分割の合意をした場合には、離婚後に、年金事務所で年金分割の請求手続をする必要があります。
この請求手続をしないと、標準報酬(納付記録)は変更されませんので、忘れずに行わなければなりません。
また、年金分割の手続は、離婚をした日の翌日から2年を経過すると、請求することができなくなることには、注意しなければなりません。

裁判所の手続によって年金分割の割合を定めたときは、調停(和解)の場合は調停(和解)調書の謄本または抄本を、審判(判決)の場合は審判(判決)書の謄本または抄本と確定証明書を持って、請求する方が一人で手続を取ることができます。

協議によって年金分割の割合を定めたときは、請求する方と請求された方が二人そろって、または二人のそれぞれの代理人が、年金事務所に必要書類を直接持参する必要があります。

3号分割制度(3号被保険者(※)であった方からの請求により、平成20年4月1日以後の結婚期間における納付記録を2分の1に分割できる制度)では、夫婦の合意は必要なく、請求する方が一人で手続を取ることができます。

※「3号被保険者」とは、会社員や公務員の扶養に入っていて、自分で国民年金保険料を納付しなくても国民年金加入者になっている方のことを意味します。

(2)年金の種別変更・加入

結婚中は配偶者の扶養家族だったという方は(被扶養者として3号被保険者の資格を有していた方は)、離婚によって扶養から抜けることで、3号被保険者の資格を失うことになります。
この場合には、3号被保険者から1号被保険者への変更の手続をすることになります。
就職して厚生年金に切り替える場合には、勤務先へ年金手帳を提出して手続を行います。
国民年金に加入する場合には、住所地の市町村役場に年金手帳を持参して手続を行います。

共働きだった場合は、勤務先の総務などに離婚したことを報告することで、勤務先が必要な手続(姓や住所の変更)をしてくれます。

3 離婚後の医療保険の手続

日本の医療保険は、国民健康保険と健康保険(社会保険)の2つに大別され、いずれかの保険に加入していることになります。
保険証は世帯ごとに作成されていて、離婚後は、自分を世帯主とする医療保険に加入する必要があります。

(1)自分自身が会社員または公務員の場合

会社員または公務員の方は、健康保険に加入済みであり、給料から保険料が天引きされていると考えられます。
この場合には、離婚後も特に手続は必要なく、そのまま継続されます。

(2)自分自身が会社員または公務員の扶養に入っていた場合(専業主婦の方など)

結婚中は配偶者の扶養家族だったという方は(配偶者の健康保険に被扶養者として加入していた方は)、離婚によって配偶者の扶養から外れ、その健康保険の資格を失うことになります。
そして、もし離婚後に就職するということであれば、就職先の健康保険に加入することになりますし、就職しないという場合には、国民健康保険に加入することになります。

ここでの加入手続には、元配偶者の勤務先から発行される「資格喪失証明書」が必要となります。

(3)自営業の場合

自営業の方は、現在、国民健康保険に加入していると考えられます。
その場合には、特に手続は必要ありません。

(4)子どもを自分自身の医療保険へ移す場合

子どもが配偶者の医療保険に被扶養者として加入している場合、子どもの医療保険の資格については、離婚によって失われるわけではありません。
したがって、特に手続を取らなければ、離婚後も、子どもは、元配偶者の医療保険にそのまま加入した状態となります。

もっとも、元配偶者の医療保険に加入したままの状態では、子どもの保険証は元配偶者に交付されることになります。
離婚後もずっと保険証のやり取りを続けることは、あまり現実的ではありませんので、親権者として子どもを監護する場合には、自分自身が加入する医療保険への加入手続をした方がよいでしょう。
この加入手続には、元配偶者の勤務先から発行される「資格喪失証明書」が必要となります。

4 離婚後の各種名義変更の手続

離婚に伴って本籍・名字・住所などに変更があるときは、運転免許証、印鑑登録、パスポート、その他公的身分証(マイナンバーカード等)、預金通帳、クレジットカード、生命保険・学資保険、携帯電話などについて、書き換え・変更の手続が必要となります。

また、離婚に伴う財産分与により、元配偶者から不動産や自動車を譲り受けたときは、その自動車、不動産の名義変更の手続が必要となります。

5 当事務所のサポート

以上見てきたように、離婚後の諸手続には様々なものがあり、手続をする場所についても、様々な場所に赴かなければなりません。
非常に面倒に思うかもしれませんが、放置してしまうと、思わぬ不利益を被ってしまうことがあることは、冒頭でも述べた通りです。

当事務所では、離婚問題のご依頼をいただいた方へ、ご要望により、以下のサポートを提供させていただいております。
離婚後の諸手続についても、可能な限りサポートを提供させていただいておりますので、安心して離婚問題をお任せいただけます。

●元配偶者の勤務先から発行される資格喪失証明書が必要な場合には、弁護士が間に入って、元配偶者への発行手配を求める連絡、資格喪失証明書の受け渡しを行うことができます。
●年金分割で、協議によって割合を定めたときは、依頼者の代理人として、年金事務所に赴き、手続を行うことができます。
●不動産登記の名義変更手続きが必要な場合、連携している司法書士をご紹介させていただくことができます。