不倫行為や暴力などによって離婚の原因を作った者を「有責配偶者」と呼びますが、そのような有責配偶者からの離婚請求は認められるのでしょうか。
離婚の方法には、協議離婚・調停離婚・裁判離婚の3つがあります。
このうち、協議離婚や調停離婚は、夫婦間で離婚の合意をすることで、離婚が成立します。
そのため、たとえ有責配偶者であったとしても、夫婦間で合意に至れば、協議離婚や調停離婚により、離婚することができます。
しかし、相手方が離婚に応じない、離婚の条件で折り合いがつかないといった理由で、協議離婚や調停離婚ができなかった場合には、裁判で離婚を求めていくことになります。
そして、現在の裁判実務では、有責配偶者からの離婚請求の場合には、①夫婦の年齢や同居期間などを考慮した上で、別居期間が相当長期に及んでいること、②夫婦に未成熟の子どもがいないこと、③離婚によって相手方配偶者が精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態に置かれないこと、といった諸事情を考慮し、これらが満たされる場合には離婚を認めるという運用になっています。
これは、落ち度のない相手方配偶者や子どもを守る必要がある一方で、夫婦関係が破綻してしまっているような場合に、有責配偶者からの離婚請求であるという理由だけで離婚が一切認められないことによる不都合さとのバランスを取ったものと見ることができます。
それぞれの要素について見てみると、まず①の別居期間については、裁判上、おおよそ6年から8年程度の別居であれば、相当長期に及ぶものと判断される傾向にあります。
また、②の未成熟子については、裁判例では、高校2年生の子を未成熟子としたものがあります(もっとも当該裁判例では、その他の諸要素を考慮して、結論としては裁判離婚を認めています)。
このように、有責配偶者が裁判で離婚を求めて、これが認められるためには、相当高いハードルが課せられているといえます。
したがって、有責配偶者が離婚を考えている場合には、裁判で離婚が認められるような状況かどうかを慎重に検討する必要があります。
その上で、仮に、裁判だと離婚が認められないような状況であれば、相手方が離婚に応じてくれるような条件を提示した上で、協議離婚や調停離婚を求めるといった対応を取る必要が出てきます。