1 養育費の未払い・滞納の問題

離婚時に養育費の金額を取り決めていても、きちんと支払を受け続けている家庭は、統計上多くはありません。
厚生労働省(現在の管轄はこども家庭庁。)による令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告によれば、母子家庭のうち、現在も養育費の支払を受けているとの回答があったのは、28.1%にとどまっています(なお、当該割合を算出するにあたっては、養育費の取り決めをしていない母子家庭も分母に計上されています。)。

従前からの社会問題ではありますが、養育費の未払い・滞納というのは、特に母子世帯の貧困化とも関連する事項だと思います。
今回は、このような社会問題の一つでもある、養育費の未払い・滞納があった場合の対応について、お話しさせていただきます。

2 養育費が支払われなくなったときの5つの対応

(1)連絡・催促

元配偶者との間で取り決めた養育費の取決め方法は、離婚調停手続や合意書で取り決めている場合もあれば、口約束での取決めの場合もあるかと思います。

いずれの取決め方法であったとしても、元配偶者が任意に支払をしてくれるのが最も簡便な回収方法ですし、費用もかからないので、養育費が支払われなくなった場合には、まずは元配偶者に対して、連絡をし、養育費の支払を催促していくのが良いと考えられます。
この催促の連絡は、養育費の未払いを把握した時点で、すぐに行うべきでしょう。
なぜなら、未払いの期間が長期間となってしまうと、その分元配偶者が養育費支払を軽視してくることが考えられますし、長期間未払いだと、元配偶者がまとめて支払うということについても、誠意をもって応じてきてくれないことも考えられるからです。

連絡するにあたっては、後々言った言わないの水掛け論となってしまわないように、証拠として保存できるLINEやメールで連絡していくのが良いでしょう。

また、連絡する際には、元配偶者の感情を硬直化させるのを防ぐために、元配偶者を非難する内容とならないように気を付けつつ、①未払いになっている額、②支払をしてほしい期限を冷静に伝えていくのが良いと考えられます。

元配偶者に対して、LINEやメールでの連絡をしても、これを無視されたり、支払を拒否されたりする場合には、配達日・送付した内容が証拠として残り、かつ、元配偶者に対して、プレッシャーを与えることができる内容証明郵便を用いるのも、連絡方法の一つとして検討しても良いかと思います。

(2)履行勧告/履行命令

養育費の取決め方法として、調停手続や審判、判決によって取決めがされている場合には、履行勧告・履行命令という家庭裁判所の制度を利用することができます。

履行勧告は、養育費の支払を受けることができる者からの申し出により、元配偶者に対して養育費の支払をするように勧告をするという制度です。
この履行勧告の申し出は、書面や口頭のみならず、電話によって行うこともできます。
履行勧告の手続については、費用は特段かかりませんが、あくまで家庭裁判所から養育費を支払うよう勧告するに留まるため、支払を強制することはできません。

また、履行命令は、履行勧告によっても養育費が支払われない場合に、家庭裁判所に申し出ることによって元配偶者に対して、一定の期限までに養育費の支払を命じる制度です。
履行命令に正当な理由なく従わない場合には、10万円以下の過料が処せられる点で、履行勧告に比べて、相手方にかけることができるプレッシャーは大きいかと思います。
もっとも、この履行命令も、あくまで直接元配偶者から養育費を回収する制度ではなく、間接的にプレッシャーを与える制度に過ぎないので、確実に養育費を回収できるものではありません。

(3)強制執行

養育費の取決め方法として、調停手続や審判、判決によって取決めがされている場合に加え、強制執行に応じる旨の文言が記載されている公正証書で養育費が取り決められている場合には、裁判所による強制執行手続を利用できます。

また、令和8年4月1日に施行された改正家族法により、一定額までの養育費に対して、「一般先取特権」という権利が付与されました。
これにより、調停手続などで養育費の取決めがなされていなくとも、自分達で作成した離婚協議書等の合意書があれば、強制執行手続を利用することができることとなりました。

もっとも、「一般先取特権」が付与されている養育費の金額は、子ども1人について、月額8万円までとされているので、これよりも多い金額を自分たちで作成した合意書で定めている場合には、(4)でご説明する訴訟手続を利用することが考えられます。

元配偶者の勤務先を把握していれば、元配偶者が同じ勤務先に勤め続ける限り、一度の差押え手続で、継続的に養育費の確保をしていくことが可能となります。

他方で、強制執行を行ったものの十分な回収ができなかった場合や、元配偶者が転職してしまったことにより、給与差押えが困難となってしまうこともあります。
このような場合、一定の要件を満たす場合には、「財産開示手続」や、「第三者からの情報取得手続」を利用して元配偶者の財産情報や勤務先に関する情報を取得したうえで、強制執行手続を利用することも考えられます。
令和8年4月1日に施行された改正家族法により、「財産開示手続」や「第三者からの情報取得手続」を申立てた場合、給与の差押えをしないという意思を表示しない限り、元配偶者の給与の差押命令の申立てをしたものとみなされるという制度が創設されました(ワンストップ執行手続)。
そのため、以前に比べて、養育費を回収していくための負担が軽減されたといえるでしょう。

なお、ワンストップ執行手続が利用できるのは給与に関する情報に限られ、不動産や預貯金等に関する情報は対象にならないので、この点は留意しておく必要があります。

(4)訴訟

養育費の取決め方法として、調停手続や審判、判決などのような裁判所の手続で取り決めていない一方で、公正証書ではなく自分達で作成した離婚協議書等の合意書によって養育費の取決めがなされていた場合には、合意書に基づく養育費の支払に関する訴訟手続を利用することが考えられます。
養育費の請求に関するものについては、原則として、調停手続などを取り扱う家庭裁判所が判断すべきであると法律で定められていますが、養育費に関して、有効な合意書が取り交わされているような場合には、通常の訴訟手続で請求することを否定する理由はないという旨判断した裁判例があります(東京地裁平成26年5月29日判決。事件番号:平成25年(ワ)第24898号。)。

(5)調停

元配偶者との養育費の取決め方法が、口約束の場合には、これまでお話しした(2)から(4)のような手続を利用することができません。
このような場合には、家庭裁判所での調停手続を利用することが考えられます。

調停手続というのは、調停委員という第三者が元配偶者との間に入ってくれた上で行う話し合いの手続で、基本的に相手方と面と向かって話をすることはないので、冷静に話し合いをしていくことが期待できます。

もっとも、そもそも元配偶者が調停手続の期日に出頭しない場合や、養育費の金額等について合意することができない場合には、裁判官が双方の事情を考慮したうえで養育費の金額を判断する審判という手続に移行します。

3 弁護士にご相談ください

以上のとおり、養育費が支払われなくなったときの対応についてご説明させていただきました。
どのように対応していくべきかお悩みの場合には、具体的なお話しをお聞かせいただいたうえで、一緒に対応方針について検討していくことができると思います。
お悩みの方はお気軽に当事務所にご相談いただければと存じます。

(弁護士・畠山賢次)

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