婚姻費用の算定表には、「〇万円~〇万円」というある程度の相場が示されています。
しかし、算定表の「〇万円~〇万円」の範囲の中でいくらが妥当なのか?という問題になることも少なくありません。
そこで、正確な婚姻費用の金額を計算するための方法として、「標準算定方式」というものがあります。
なお、婚姻費用の算定表は、標準算定方式による計算結果を表にしたものです。
このページでは、婚姻費用の標準算定方式による計算について、解説させていただきます。

婚姻費用の標準算定方式による計算の手順

標準算定方式では、婚姻費用を次のような手順で計算します。

①夫婦の基礎収入の合計を計算する。
②子どもとの同居状況に応じて夫婦それぞれの生活費指数を計算する。
③夫婦それぞれに必要となる生活費の年額を計算する。
④必要となる生活費の年額に不足している金額を計算する。

以下で具体的にご説明いたします。

婚姻費用の標準算定方式による計算の具体例

【設例】
夫婦の間に2人の子ども(16歳と8歳)がいる。
妻が2人の子どもを連れて家を出て、夫とは別に生活している。
夫は給与所得者で年収が600万円である。
妻は給与所得者で年収が200万円である。

上記の例を用いながら、具体的な計算の手順をご説明いたします。

①夫婦の基礎収入の合計を計算する。

実際の年収額のうち生活費として使えるのは、税金などの様々な費用を差し引いた残額です。
このように、実際の年収額のうち生活費として使えるであろう金額のことを「基礎収入」と呼びます。
基礎収入は、実際の年収額に一定の基礎収入割合という割合を掛けることにより算出されます。
この基礎収入割合の数値は、以下のとおりです。

給与所得者の基礎収入割合

年収額 基礎収入割合
~75万円 54%
~100万円 50%
~125万円 46%
~175万円 44%
~275万円 43%
~525万円 42%
~725万円 41%
~1325万円 40%
~1475万円 39%
~2000万円 38%

自営業者の基礎収入割合

年収額 基礎収入割合
~66万円 61%
~82万円 60%
~98万円 59%
~256万円 58%
~349万円 57%
~392万円 56%
~496万円 55%
~563万円 54%
~784万円 53%
~942万円 52%
~1046万円 51%
~1179万円 50%
~1482万円 49%
~1567万円 48%
給与所得者の基礎収入割合

年収額 基礎収入割合
~75万円 54%
~100万円 50%
~125万円 46%
~175万円 44%
~275万円 43%
~525万円 42%
~725万円 41%
~1325万円 40%
~1475万円 39%
~2000万円 38%

自営業者の基礎収入割合

年収額 基礎収入割合
~66万円 61%
~82万円 60%
~98万円 59%
~256万円 58%
~349万円 57%
~392万円 56%
~496万円 55%
~563万円 54%
~784万円 53%
~942万円 52%
~1046万円 51%
~1179万円 50%
~1482万円 49%
~1567万円 48%

【設例の場合】
・夫の基礎収入:600万円×41%=246万円
・妻の基礎収入:200万円×43%=86万円
・夫婦の基礎収入の合計:246万円+86万円=332万円

②子どもとの同居状況に応じて夫婦それぞれの生活費指数を計算する。

子どもとの同居状況に応じて、夫婦それぞれの生活費指数を計算します。
子どもと同居している側は自分(大人1人)と子どもの生活費指数の合計、子どもと離れて生活している側は自分(大人1人)の生活費指数が割り振られます。
この生活費指数の数値は、以下のとおりです。

生活費指数

大人 100
15歳以上の子ども 85
14歳以下の子ども 62
生活費指数

大人 100
15歳以上の子ども 85
14歳以下の子ども 62

【設例の場合】
・夫の生活費指数:100
・妻と2人の子ども(16歳と8歳)の生活費指数:100+85+62=247

③夫婦それぞれに必要となる生活費の金額を計算する。

夫婦それぞれに必要となる生活費の金額は、上記①で計算した夫婦の基礎収入の合計を、上記②で計算した生活費指数で按分することにより算出されます。

【設例の場合】
・夫婦の基礎収入の合計:332万円
・夫の生活費指数:100
・妻と2人の子ども(16歳と8歳)の生活費指数:247
・夫に必要となる生活費:332万円×100/(100+247)≒95万7000円
・妻に必要となる生活費:332万円×247/(100+247)≒236万3000円

④必要となる生活費に不足している金額を計算する。

必要となる生活費に不足している金額は、上記③で計算したその人に必要となる生活費から、上記①のその人の基礎収入を差し引くことにより算出されます。
この不足額が婚姻費用の年額であり、12か月で割ることにより婚姻費用の月額が算出されます。

【設例の場合】
・妻に必要となる生活費:236万3000円
・妻の基礎収入:86万円
・婚姻費用の年額:236万3000円-86万円=150万3000円
・婚姻費用の月額:150万3000円÷12か月≒12万5000円

婚姻費用の計算のことは弁護士にご相談ください

以上のように、婚姻費用の正確な金額を算出するためには、標準算定方式という少し複雑な計算方法を用いる必要があります。
婚姻費用の計算についてご不明のことがありましたら、離婚問題に強い弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
当事務所では、離婚や婚姻費用に関するご相談・ご依頼を多数お受けしております。
ぜひ一度、お気軽に当事務所にご相談いただければと存じます。

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