モラハラを理由として離婚を求めたり、慰謝料を請求したりするためには、モラハラの事実が存在するものと認められることが前提条件となります。
相手方がモラハラの事実を認めてくれるのであればそれほど問題もありませんが、モラハラをしている側がモラハラの事実を認めることはまずありません。
相手方は「そんなことを言った覚えはない」、「そんなつもりで言ったのではない」などと様々な言い訳を述べて、モラハラの事実を否定してくることがほとんどです。
そのような状況に備えるためには、モラハラの事実が認められるだけの証拠があるかどうかを検討することが重要となります。

モラハラの証拠としては、どのようなものが考えられるでしょうか。
以下では、モラハラの主な証拠について、ご説明させていただきます。

モラハラの言動を録音した音声データ

相手方のモラハラの言動が録音された音声データは、モラハラを裏付ける一つ確実な証拠となります。
録音により、その場の雰囲気、相手方の発言の内容、相手方の態度、相手方の発言に対する周囲の返答や反応などの音声が正確に記録されていれば、モラハラの事実が認められる可能性は高いです。

録音を行う際には、当然ながら、相手方に気づかれないように工夫する必要があります。
また、相手方がモラハラの言動を取った瞬間だけ録音するのではなく、その前後の会話の流れや状況が分かるようにある程度時間をかけて録音を行うのが望ましいでしょう。
モラハラの言動部分だけの録音データだと、相手方から「ねつ造した音声だ!」とか、「そういう意味で言ったのではない」といった言い訳や反論をされてしまう可能性もあり得ます。

ラインやメールなどの記録

相手方から送られてきたラインやメールなどの記録も、相手方の言動を裏付ける確実な証拠と言えます。
メール等の内容、その時間帯(深夜・日中・早朝など)、その頻度(数分おき、数時間おき、返答するまで短時間に大量に送られてきたなど)といった情報から、相手方のモラハラを裏付けることができる場合には、モラハラの有力な証拠となります。

ラインやメールなどの記録を証拠として準備する際には、きちんと、メール等の内容を確認できるように保存・保管しておく必要があります。
保存や保管の方法としては、メールの文面を印刷する方法、メールやラインのやり取りの画面を写真で撮影する方法、スクリーンショット機能を利用して保存する方法、ラインのバックアップ機能を利用する方法などが考えられます。

相手方のモラハラを基礎づける物的証拠

モラハラの過程で作られた文書や、モラハラを裏付ける物的証拠が存在する場合には、それらはモラハラの事実を裏付ける証拠となり得ます。
例えば、モラハラの一環として、事細かい家計簿や一日の予定計画書などを作成させられていたり、反省文や始末書を書かせられていたりする場合には、そのような書面はモラハラを裏付ける有力な証拠となります。
また、モラハラの中で物に当たる癖がある場合、例えば、壁やドアを殴って壊した跡や、床に投げつけられて壊れたスマートフォンなどを写真撮影して保存しておけば、それらもモラハラを裏付ける証拠となり得ます。

相談窓口や警察への相談記録

モラハラの被害を受けてお悩みの方は、女性センターや配偶者暴力相談支援センターなどの相談窓口や警察に相談を行う場合も少なくありません。
そのような相談を行った場合、相談窓口等では、通常は相談記録が作成されますので、そのような相談記録は、モラハラの存在を推認させる証拠となり得ます。
モラハラの相談を行った記録は、自己情報の開示請求手続を取り、開示を求めていくことになります。

もっとも、そのような相談記録は、相談を行ったという事実を証明することはできますが、そのことから直ちにモラハラの事実までが裏付けられるわけではありません。
相手方からすれば「モラハラなんて存在しないのに、相談なんかして大げさだ」、「被害妄想だ」などと反論される可能性もあります。
そのため、相談記録はモラハラの事実を推認させる一事情とはなりますが、その証拠の価値は高くないものと考えられます。

うつ病などの精神疾患にかかっていることの診断書

モラハラを原因として精神的に疲弊してしまい、精神内科などの医療機関を受診する方も少なくありません。
そのような場合には、精神内科などに通院した事実や、うつ病などの精神疾患と診断された診断書があれば、それらは、モラハラの存在を推認させる証拠となり得ます。

もっとも、そのような精神疾患に関する証拠は、精神疾患に関する事実を証明することはできますが、その原因がモラハラであることや、モラハラの存在までを裏付けることは難しいと言えます。
そのため、精神疾患に関する証拠は、モラハラの事実を推認させ、モラハラの被害の程度を推し量る一つの証拠とは言えますが、その重要度は高くないものと考えられます。

モラハラに関する記載のある日記帳やメモ

モラハラの被害を受けている場合、その悩みや苦悩を日記などで記録している方もいらっしゃいます。
そのようなモラハラに関する記載のある日記やメモなども、モラハラを推認させる一つの証拠となり得ます。

もっとも、そのような日記やメモなどは、ご自身で作成するものであり、相手方からは「全くのでたらめだ」などと言われることも多くあります。
そのため、日記などの証拠については、厳しく信用性が検討されることが多く、証拠としての価値や重要度は高くないものと考えられます。

当事者や目撃者の証言

モラハラを体験した当事者やモラハラの様子を目の当たりにした目撃者の証言も、モラハラの一つの証拠となります。

もっとも、人の記憶や認識には限界がありますし、勘違いや思い込みをすることもありますので、その証言の信用性は厳しく判断される傾向にあります。
親族・友人など身内の証言は、一般的に信用性が低いものとされるでしょう。
特に、モラハラの有無について、お互いの言い分が真っ向から対立しているような場合には、他に裏付けとなる証拠がなければ、証言だけでモラハラを認めてもらうことは非常に困難と言えます。
また、証言を証拠とするためには、裁判所に出頭して、尋問を受ける必要が出てくることもありますので、精神的なハードルがあり、負担も大きいところです。

おわりに

以上のように、モラハラに関する主な証拠について説明してきましたが、モラハラの証拠はこれらに限られるものではありません。
また、証拠の意味や重要性については、その証拠の内容によっても違いますし、事案ごとにも様々に評価されます。
そのため、実際の事案ごとに、モラハラの内容や相手方の対応、証拠の具体的な内容を確認しないことには、その証拠が実際にどのくらいの意味を持つのか、どれほどの重要性があるのか、その証拠でモラハラを認めてもらえそうかの見通しをつけることはできません。

そこで、モラハラの被害でお悩みの方は、一度、モラハラの証拠としてどのようなものが存在するのか、その証拠はどうやって集めるべきか、今手元にある証拠でモラハラが認められるのかといった点について、離婚やモラハラに詳しい弁護士に相談されることをお勧めいたします。
当事務所の弁護士は、これまでに、モラハラ被害による離婚に関して、多数のご相談・ご依頼をお受けして参りました。
是非一度、当事務所にご相談いただければと存じます。

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モラルハラスメント

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