特有財産からの家賃収入や配当収入も、養育費・婚姻費用を計算する際の収入に含めると考えるのが通常です。
この点、東京高等裁判所昭和42年5月23日決定では、「妻の特有財産の収入が原則として分担額決定の資料とすべきではないという理由または慣行はない」、「特有財産である前記共同住宅の賃料収入を考慮し婚姻費用の分担額を決定することは当然のことである」と判断されました。
また、大阪高等裁判所平成30年7月12日決定では、「特有財産からの収入であっても、これが双方の婚姻中の生活費の原資となっているのであれば、婚姻費用分担額の算定に当たって基礎とすべき収入とみるべきである」と判断されました。
その他、東京高等裁判所平成28年9月14日決定、東京高等裁判所令和4年10月13日決定など、同様の判断をした裁判例が多く存在します。
一方で、横浜家庭裁判所昭和57年2月15日審判およびその抗告審である東京高等裁判所昭和57年7月26日決定では、不動産収入を婚姻費用の算定において考慮しないと判断されました。
ただし、不動産収入が多額の相続税等延滞分の納税にあてられており、主として給与所得によって生活していたという特殊な事案です。
また、上記の大阪高等裁判所平成30年7月12日決定のように「特有財産からの収入が夫婦生活における生活費の原資になっていたか」を判断基準とする考え方も有力であり、実務上の取り扱いは確定していないように思われます。