子どもの親権者を変更するためには、家庭裁判所で親権者変更の調停・審判の手続を経る必要があります。
また、状況によっては、子の引渡しの審判、親権者の職務執行停止・職務代行者選任の保全処分を申し立てることも検討する必要があります。
親権者変更の調停・審判
子どもの親権者の変更は、親同士が合意しているというだけでは、変更を成立させることができません。
家庭裁判所で、親権者変更の調停・審判の手続を経ることが必要です。
この点、親同士が親権者変更に合意している場合には、親権者変更の調停を申し立てれば、調停の席での話し合いによって、変更を成立させられることが多いです。
しかし、親同士で親権者変更について争いがある場合には、調停の席での話し合いで合意することが困難と認められるのが通常です。
そのため、親権者変更の審判を申し立てるのが基本です。
親権者変更の審判では、子どもの生活状況(子どもが現在、問題なく生活できているかどうか)、子どもの年齢(子どもが乳幼児であれば、母親が優先される)、子どもの意思(子どもが一定年齢以上であれば、親権者変更に関する子どもの意向が尊重される)などの事情を考慮して、親権者を変更するべきかどうかが判断されます。
子の引渡しの審判
子どもが相手方(親権者)のもとで生活している状況で、親権者変更の審判を申し立てる際には、同時に、子の引渡しの審判を家庭裁判所に申し立てるのが基本です。
子の引渡しの審判とは、相手方のもとで生活している子どもを、ご自身のもとに引き渡すべきかどうかについて、家庭裁判所に決定してもらう手続です。
子の引渡しが認められるかどうかは、親権者変更が認められるかどうかと連動しています。
親権者変更が認められる場合には、ご自身(変更後の親権者)のもとに子どもを引き渡すように命じられます。
一方で、親権者変更が却下される場合には、子の引渡しもまた、却下されます。
親権者の職務執行停止・職務代行者選任の保全処分
例えば、子どもが相手方(親権者)からの虐待やネグレクトに耐えかねて、ご自身のもとに身を寄せて親権者変更を希望しているようなケースがあるとします。
このような場合には、親権者変更の審判と同時に、親権者の職務執行停止・職務代行者選任の保全処分を家庭裁判所に申し立てる必要があります。
親権者変更の審判は、相手方が変更を争ってくるかどうかにもよりますが、決着までには少なくとも数か月以上はかかります。
その間、子どもがご自身のもとで生活しているにもかかわらず、親権者変更の結論が出ていないために、子どもに関する様々な決定・手続を代行できないとなると、子どもの生活などに大きな支障が生じるおそれがあります。
そこで、相手方の親権者としての権限を暫定的に停止し、ご自身を親権の臨時の代行者として選任してもらうための保全処分を、家庭裁判所に申し立てる必要があるのです。