事案内容:親権
依頼者:30代の男性(会社員)
相手方:30代の女性(パート勤務)
結婚歴:13年
子ども:4人

1 夫婦の状況

相手方である妻は、依頼者に対し、性格の不一致や、同居している依頼者の両親との不和などから、離婚を切り出しました。
また、離婚の条件として、4人の子どもをそれぞれが2名ずつ引き取る形で離婚をする内容の提案をしてきました。
これに対して、依頼者は、相手方との離婚には応じるが子どもを別々にすることには応じられない、と回答しました。
しかし結局、相手方は、一番年上の長女が中学校へ進学するタイミングに合わせて、長女のみを実家に連れて別居しました(残りの3人の子どもたちは依頼者が連れ去りを拒否したため、依頼者側に残りました)。

2 相談・依頼のきっかけ

その後、依頼者は、相手方から、残り3人の子の監護権指定、子の引渡しの審判、審判前の保全処分及び離婚調停の申立てを受けました。
依頼者は、「子どもたちについては相手方に渡したくない」、「長女に関しては自分の意思で妻に付いていった節があるから戻らないと思われるが、子どもたちを別々に生活させるのは適当ではないため、できれば引き取りたい」という意向でした。
そのため、依頼者から当事務所に対し、これらの手続および離婚調停への対応に加え、相手方と伴って別居した長女の監護権指定及び子の引渡しの審判の申立ても含め、一括してご依頼いただくことになりました。

3 当事務所の活動

相手方は、審判手続において、これまで主に子どもたちの面倒を見てきたのは自分であると主張してきました。
これに対し、当事務所の弁護士は、子どもたちの面倒はお互いに見ており、依頼者の両親の協力も大きかったこと、相手方が特定の子どもにだけきつく当たっており監護権者としての適格性を欠くこと、別居後これまでよりも依頼者が子どもたちの面倒をみるようになったことで子どもたちが規則正しい生活をするようになったこと、子どもたちが相手方の実家へ引っ越すとなると子どもたちの生活環境に多大な影響が及ぶことなどを主張し、子どもたちが今後生活していく上では、依頼者と同居する方が望ましいことを主張していきました。

4 当事務所が関与した結果

当事務所の弁護士の活動の結果、家庭裁判所調査官の調査を経て、長女の監護権者については相手方、残り3人の子どもたちの監護権者については依頼者とする内容での審判が、家庭裁判所によって下されました。
このような結果について、依頼者は予想通りであったためこれを受け入れることにしましたが、相手方は不服として高等裁判所に即時抗告しました。
そのため、当事務所の弁護士はこの手続においても適切な反論を行ったところ、即時抗告は棄却されたことから、家庭裁判所の判断が維持されることになりました。
その後、これに続いて行われた離婚調停では、面会交流、養育費、財産分与に関する話し合いを行い、長女の親権者を相手方、残りの3人の子どもたちの親権者を依頼者として、適切な内容での離婚条件を定めて調停離婚を成立させることに成功しました。

5 解決のポイント(所感)

子の監護者指定および子の引渡しの審判にあたっては、子どものこれまでの監護状況が特に重視されます。
そのため、子どもが特に幼いうちは、母親が面倒を見ることが多いことから、女性が監護権者に指定されることが多い傾向にあります。
もっとも、これは子どもの面倒を適切にみてきたことが前提であり、本件のように子どもに対して虐待をしているような場合には、このような監護状況を維持させるのは適当ではありません。
また、別居によりこれまで子どもの面倒をあまり見ていなかった親が面倒をみるようになったことで、子どもの生活状況が改善したのであれば、あえてこれまで主に監護してきた方の親に監護を継続させる必要性が低くなります。
本件は、父親である依頼者が親権者となる解決方法となりましたが、依頼者が別居後に子どもたちとこれまで以上に接するようになり、子どもたちの生活環境を改善させていった努力が結果に結びついたものと思われます。