同性愛者・LGBTと離婚の問題

LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイ・セクシャル、トランスジェンダーの頭文字を取った総称で、セクシャル・マイノリティ(性的少数者)を指す言葉です。

少しづつ理解が進んでいるとはいえ、同性愛者・LGBTの方は、本当の自分を知られた場合に不当な対応を取られることを恐れており、いまだ同性愛者・LGBTであることを告げられない状況にあるといえます。
そのため、同性愛者・LGBTであることを家族にすら隠し、結婚して、子どもを育てることも少なくありません。
本当は同性のことが好きだけど世間体を考えて異性と結婚した、結婚してから配偶者が同性愛者・LGBTであることが発覚したという方は、少なからずいらっしゃると思います。

そして、結婚してから配偶者が同性愛者・LGBTであることが発覚し、そのことをどうしても許すことができずに離婚問題に発展することも珍しくありません。
あるいは、配偶者が同性愛者・LGBTであることを知った上で結婚したものの、性的指向の違いから、いつしか夫婦の関係に亀裂が生じ、離婚問題に発展するということもありえます。

離婚は、双方が合意すれば、裁判所を通さずに成立します(協議離婚)。
しかし、合意に至らなければ、最終的には裁判となります。
このようにして裁判となった場合、配偶者が同性愛者・LGBTであることを理由に、裁判所は離婚を認めるかが問題となります。

同性愛者・LGBTの配偶者が同性と性的関係を持っていた場合

裁判で離婚が認められるのは、法律上の離婚原因がある場合に限られます。
そして、同性愛者・LGBTの配偶者が、同性と性的関係を持っていた場合には、法律上の離婚原因である「相手方に不貞行為があったとき」(770条1項1号)に当たるかが問題となります。

この点に関係して、東京地方裁判所平成16年4月7日判決は、妻が他の女性と同性愛関係になったことについて、「不貞」とは、「性別の異なる相手方と性的関係を持つことだけではなく、性別の同じ相手方と性的関係を持つことも含まれるというべきである」として、不法行為の成立を認め、妻に慰謝料の支払いを命じています。

したがって、同性愛者・LGBTの配偶者が、同性と性的関係を持っていた場合には、法律上の離婚原因である「相手方に不貞行為があったとき」(770条1項1号)に当たり、離婚が認められます。

ただし、実際問題として、例えば、同性同士で同じ部屋で一晩過ごしたとしても、「友達と飲んでいただけだ」、「話をしていただけだ」などの弁解が成立しやすいため、不貞を認定するためには、性的関係を示す確実な証拠が必要となる可能性が高いでしょう。

同性愛者・LGBTであることを理由に離婚が認められるか

次に、そのような不貞が証明できない、あるいは特定の相手がいるわけでもない場合において、配偶者が「同性愛者・LGBTであること」を理由に離婚が認められるかについては、「同性愛者・LGBTであること」が、法律上の離婚原因である「婚姻を継続し難い重大な理由」(民法770条1項5号)といえるのかが問題となります。

例えば、二人が出会った頃から、他方がLGBTであることをずっと隠しており、それが発覚したことで夫婦関係が破綻した場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして、離婚が認められる可能性は十分あると思われます。
性的指向は、夫婦生活にも影響する重要な事柄であると考えられるところ、このような重要な事柄を隠して、一方がそのことを知らなかった場合、結婚後に発覚すれば、大きなショックを受けるでしょう。
したがって、そのことが原因で夫婦関係が破綻するということは十分に考えられます。

もっとも、結婚前に、同性愛者・LGBTであることを打ち明けており、配偶者が同性愛者・LGBTであることを知った上で結婚した場合には、その後不貞行為などがないのであれば、同性愛者・LGBTであることを理由に離婚が認められることは難しいと思われます。

このように、同性愛者・LGBTであることを理由に離婚が認められるか否かについては、まさにケース・バイ・ケースであるといえます。
同性愛者・LGBTと離婚の問題でお悩みの方は、離婚問題に精通した弁護士に具体的な状況を伝えて、見通しについてご相談されるとよいでしょう。