昨今、不倫・浮気の調査のために、GPS機器が使用される例がしばしば見られます。
しかし、GPS機器を使用した不倫・浮気の調査には、態様によっては違法とされるリスクがあり、GPSの位置情報の証拠価値も問題となります。
今回のコラムでは、不倫・浮気の調査でGPS機器を使用する際の注意点について、ご説明させていただきます。
GPS機器を使用した不倫・浮気の調査の適法性
GPS機器を車に設置する
【同居中の夫婦いずれかの名義の車】
夫婦共有財産とみなされるため、プライバシー侵害には該当せず、違法にはならないと考えられます。
【別居中の配偶者が使用している車】
プライバシー権侵害により、違法と考えられます。
また、他人の私有地に違法な目的で立ち入ることとなり、住居侵入罪が成立し、違法となる可能性があります。
さらに、令和3年改正のストーカー規制法では、GPS機器を設置する行為、GPSを用いて位置情報を取得する行為が、処罰の対象となりました。
そのため、ストーカー規制法により、処罰される可能性もあります。
【不倫・浮気相手が所有する車】
プライバシー権侵害およびストーカー規制法により、違法と考えられます。
また、他人の私有地に違法な目的で立ち入ることとなり、住居侵入罪が成立し、違法となる可能性があります。
【GPS機器を設置する際に車の内装・外装を破損させたとき】
器物損壊罪が成立し、違法となる可能性があります。
GPS追跡アプリを配偶者のスマートフォンにインストールする
配偶者に無断でGPS追跡アプリを配偶者のスマートフォンにインストールすると、不正指令電磁的記録供用罪等が成立し、違法となります。
また、スマートフォンは、通常は夫婦で共用されるものではありません。
そのため、夫婦が同居している場合であっても、ストーカー規制法に違反し、違法とされる可能性が高いと考えられます。
GPS機器を配偶者の衣服・所持品に忍び込ませる
衣服や鞄・財布などの所持品は、通常は夫婦で共用されるものではありません。
そのため、夫婦が同居している場合であっても、ストーカー規制法に違反し、違法とされる可能性が高いと考えられます。
また、プライバシー権侵害により、違法と考えられます。
GPSの位置情報の証拠価値
GPSの位置情報は、GPS機器がその場所にあったという履歴を示すものに過ぎません。
例えば、配偶者の車にGPS機器を設置し、ラブホテルや不倫・浮気相手の自宅と思われる場所に行った履歴を得られたとしても、不倫・浮気の証拠として必ずしも十分とは言い切れません。
なぜなら、配偶者の車にGPSを設置したこと、車に乗っていたのが配偶者本人であることまで証明できなければ、配偶者がそこにいたという事実を裏付けることができないためです。
また、GPSの位置情報の精度は必ずしも確実なものではなく、誤差が生じることがあり得るという問題があります。
さらに、GPSの位置情報だけでは、誰と一緒にいたのか?ということを裏付けることができないという問題もあります。
以上を踏まえると、「そんなところには行っていない」、「ラブホテルの近くのコンビニにいた」、「ホテルに入ったけど、一人で休んでいた」などの言い逃れをされれば、GPSの位置情報だけで追及していくことが困難になることが考えられます。
要するに、GPSの位置情報だけでは、本当に対象者の位置情報であるかが分からず、位置情報の精度としても確実ではなく、誰と一緒にいたかも証明できないため、単体としての証拠価値は低いと言わざるを得ないのです。
ただし、GPSの位置情報が何の役にも立たないというわけではありません。
GPSの位置情報により、よく訪れるラブホテルや不倫・浮気相手の自宅と思われる場所を特定できれば、それを手掛かりにより確実な証拠の確保に繋げることが考えられます。
例えば、探偵に依頼して、配偶者と不倫・浮気相手とがそのラブホテルに出入りする場面の写真を撮影してもらうことなどです。
配偶者と不倫・浮気相手とがラブホテルに出入りする現場を押さえられれば、不倫・浮気を裏付ける確実な証拠となるでしょう。
なお、不倫・浮気の事実を裏付ける証拠については、次のページも参照いただければと存じます。
>>>不倫・浮気の証拠と集め方について
弁護士にご相談ください
以上のように、GPS機器を使用した不倫・浮気の調査には、違法とされるリスクと証拠価値の問題がありますので、事前に弁護士にご相談いただくのがよいでしょう。
(弁護士・木村哲也)